天国のRIKI

全てノンフィクション。あなたの周りにもこんなドラマが。

僕が中二階にあるリビングへの階段を滑りながらあわてて昇るため、爪を立ててカシャカシャと上がり始めると「ほら、あわてると落ちるよ」と、お父さんはお尻を押してくれます。

お母さんとお父さんはここで「ただいま」のこご挨拶です。

僕がお迎えを何よりはしゃいでするようになってからは、玄関でのお迎えは僕の独壇場なのです。

「ただいま」「おかえり」の挨拶もそこそにお父さんがソファーの前に行くのを待ちかね、僕はお父さんに跳びつきソファーに押し倒します。

お父さんの両足の間から馬乗になり、押さえ込みながらのディープキッスです。

口の周りと言わず鼻の周りと言わず顔中嘗め回します。

流石に舌を口に入れる事だけはさせてくれませんが、少しずつ出してくれる唾液を飲み干すのです。

2~3分は続くのでしょうか「いいかげんにしなさい」とお母さんにやきもち半分に窘められるまで儀式は終わりません。

そして一段落、いつのまにか僕の居場所になってしまったソファーに寝そべります。

 

愛犬が買主の口の周りを嘗め回すのは服従のしるしだと言いますが、僕とお父さんの間にはそんな関係は存在しません。

信頼と愛情があるだけで、この儀式の間にお父さんの今の気持ちや考え、そして僕がここに来る前のお父さんの記憶まで吸い取ります。

そして僕の心もお父さんに移し、これで僕とお父さんはひとつになるのです。